こりゃ日本が中国に敵うはずがない、そう痛感する日々。
中国社会のリアル
北京に移ってきて1年半以上が過ぎたわけですが、だんだんと「中国」という国のことがわかってきた気がします。食べ物とか物価とか気候とか、そういうのではなくて、今回は社会構造に関しての話です。
市場経済を導入している国の社会というのは基本的に「ピラミッド」を形成するわけで、要はリッチな人がいれば貧しい人もいます。日本でもよく「格差」が話題になりますが、それは個々人で経済力に有意な差が生じているからです。
中国で暮らしていてもこの経済格差はやはり目に付くわけですが、はっきり言って、日本の比ではありません。中国におけるピラミッドが非常に綺麗な形を成している一方、日本のピラミッドはほぼぺったんこ。そのくらい中国における経済格差は大きいのです。首都である北京でも、月給3千元(約5万円)〜6千元(約10万円)くらいの人がものすごく多いです。そんな低賃金でアパートなど借りられるはずがありませんから、みんな親戚の家にお世話になったり、4人ほど集まってルームシェアをしたりというのが一般的です。「中国人旅行客」や「爆買い」などというワードが存在するわけですが、そんなものは全くもって一般的ではないということが中国で暮らしてみるとよくわかります。
では、一体誰がお金を持っているのでしょうか?
経営者や士業等のマイナーな職を除けば、やはり一流企業の社員です。中国は日本とは違い、公務員の賃金は決して高くはないので。
一流企業の社員の賃金が高いのはどこの国でも同じなわけですが、中国の企業と日本の企業を比べると非常に大きな違いがあります。
不安定な雇用と厚遇
中国という国はとてつもなく大きいため、何を語るにしても本当に様々なケースがありますから、以下はあくまで私が知っている狭い範囲の話だと思ってお読みください。
日本の企業と比べた場合の中国企業の特徴は、「正規雇用・非正規雇用」という概念がほぼ存在しない点だと思います。はっきり言って、日本人的には全て非正規雇用です。
日本では、民間企業に入社すれば倒産でもしない限り基本的には定年まで働くことができます。色々言う人がいますが、「終身雇用」というのはまだまだ日本には根強く残っています。
しかし、中国には非常に厳格な業績審査制度や一定期間ごとに設定されたノルマが存在し、パフォーマンスが悪いと簡単にクビになります。正確には、年度ごとに審査があり、パフォーマンスが悪いと雇用を更新してもらえないのです。要は、かなり広範囲で「任期制」のようなシステムが取り入れられていて、日本的に言えば基本的に皆契約社員なのです。
そのため、中国人的にも基本的には2択なのだとか。低賃金だけれど安定している公務員を目指すか、激務かつ不安定だけれど高い賃金が得られる民間企業を目指すか。
言うまでもなく、そんなハードな環境だとわかりつつ民間企業を選ぶような中国人の中にはモチベーションの高い人が非常に多いです。怠けたら本当に簡単にクビになりますから。
業績審査は非常に厳格なので、頑張ったら頑張っただけ給料は上がります。ボーナスが24か月分出たなんていうとんでもない話も耳にしたことがあります。ただ、頑張って優れたパフォーマンスを発揮して昇進したりすると、ノルマも一気に上がります。待遇と責任やプレッシャーというのが完全に比例しているのです。ですから、どれだけ頑張ってもストレスやプレッシャーからは解放されません。そのくらい、中国で高給をもらうということは特別なことなのです。
日本が中国に敵わない理由
近年次々と日本の巨大企業が中国企業に買収されていますが、中国で働いているとよくわかります。そりゃ敵うわけないだろうなと。
日本の社会人は、ほぼ間違いなく来年も今年と同じように働き、最低でも今年と同じ給料をもらうことができます。しかし、我々には来年も同じ場所で働けている保証はないのです。給料が大きく上がる可能性もありますが、ゼロになる可能性も十分あるのです。
そんな過酷な環境で日々四苦八苦しているような連中に、日本の連中が敵うはずがありません。
先日上司とこの話をしたのですが、印象に残っているセリフがあります。
安定は人を腐らす。延いては会社をも腐らす。民間企業なんてそもそも社会において絶対に必要な存在ではなく、単なる利潤追求集団なのだから。
なるほどなと思いました。
頑張った者には努力に見合った報酬を。怠け者は速やかに切り捨てる。
そりゃ日本の企業が太刀打ちなどできるはずがありません。
ちなみに、日本には「ブラック企業」なるものが存在しますが、中国の会社はそういう意味では「ホワイト」です。頑張ったら本当に給料は大きく上がりますから。中長期の休暇なんかの取得も容易です。要は、「自分の生き方は自分で決め、責任を負いなさい」という社会なのです。
能力の低い社員にとっては、はっきり言って地獄だと思います。ノルマがこなせず、毎日深夜まで残業し、土日も出勤。給料は上がらず、ボーナスもゼロ。まあでも、それもまた本人が自分で選んだ道ですからね。
個人的に思うこと
中国で働いていて思うわけですが、何でもかんでもびっくりするくらい合理的です。
服装規定は皆無ですし、何時に出勤しようが誰からも何も言われません。昼休みには帰宅して仮眠を取っても全く問題ないし、家族と昼食を食べる人も多いです。私は毎日音楽を聴きながら仕事をしていますし、好きなタイミングで退社して問題ありません。
ただ、週一の会議でその週にやった全ての仕事を報告する義務があり、いい仕事をすれば上司から思いっきり褒められ、プロジェクトの進捗状況が悪ければ改善を促されます。部下の手柄は部下と上司双方の手柄、部下の失敗は部下と上司双方の失敗。チームごとに連帯責任があるため、上司もまた必死なのです。ちなみに、パフォーマンスが良い者から自分のチームの構成員を指名することができますし、人数も多く確保することができます。人的リソースの分配の仕方としては極めて合理的だと思います。
とまあ、個人的には中国社会は非常に洗練されていると思います。今後も日本の企業では太刀打ちできないでしょう。
しかしながら、実際に働いてみるとやはりキツいです。ノルマが本当に絶妙なラインに設定されるのでもうしんどくてしんどくて。若い頃なら問題ないのかもしれませんが、私くらいの年齢になるともうこういう水準のストレスやプレッシャーは勘弁してほしいなというのが素直な思いです。
もっとも、「頑張る」ということを止めてしまったら、人間誰しもどんどん老けていくだけなのでしょうけれど。
前へ、前へ、先へ、先へ、、、もっと、もっと、もっと、、、
そんな中国社会のスピード感を肌で感じながら日々生きていると、「人生」というものがよくわからなくなります。