元中国在住サラリーマンの徒然なる日々

かつて中国に数年間住んでいた日本人サラリーマンが綴る雑食系中国ブログ。ご連絡はTwitter(https://twitter.com/superflyer2015)経由でお願いします。

日常生活が戻りつつある北京。中国ではコロナの流行は終息したのか?

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偏向報道しかしない日本のメディアに代わって、北京在住の私が本当の話をしたいと思います。

 

制限の解除


中国では、5月1日から(一部は4月30日から)コロナ対策における各種制限の一部が解除されました。中国では5月1日から5連休なので、このタイミングで解除することで内需を喚起し経済活動を再開しようということなのだと思います。マスクの着用義務まで解除されましたから、正直私も驚きました。


たった数日前までは北京市の外から市内に入る場合には14日間の隔離が義務付けられていて、隔離を終えてPCR検査を受け、陰性であることが確認されて初めて自由になれるという非常に厳格な制限が課されていたのです。しかし今月に入ってからはそれも解除され、武漢等のごく一部のハイリスク地域以外に関しては自由に行き来ができるようになりました。

 

残っている制限


移動制限の多くが解除されたのですが、まだ残っている制限もあります。


まず、ハイリスク地域に関しては引き続き出入りに若干の制限が課されています。ただ、これは近々解除されるだろうと言われています。


市民生活に影響が大きいのはやはり「休校」なのですが、先月の下旬頃から順次解除が始まり、連休明けからこの解除の流れが加速していくようです。ただ、やはり子供たちの命は最優先で守らなければなりませんから、段階的な解除となり、完了は6月にずれ込むことになりそうです。なんでも、今後特に優先されるのは高校3年生なのだとか。中国では例年6月に「高考」という日本のセンター試験に相当する試験があり、日本とは比べ物にならないくらいの超学歴社会である中国ではこれがとてつもなく重要なイベントとなっています。ですから、まずは高3生が確実にこの試験を受けられるようにすることが最も重要なのです。


そしてその後、状況を見極めつつ大学生及び大学院生が大学に戻ることを許可することになります。中国の大学生及び大学院生は基本的に親元を離れて大学のキャンパス内にある寮で生活を送っているのですが、現在はまだ皆実家で待機しています。寮では複数人で1部屋をシェアするのが一般的であり、更に大移動も伴うということでこれまでこの措置が続いていたのです。しかし、それも連休明け以降順次解除され、学生さんたちは徐々に大学に戻ることになります。これが完了すれば、中国国内に関しては完全に日常生活が戻ったということになります。要は、今後再度爆発的な感染拡大が発生しない限り、6月中には中国ではコロナ禍は完全に終結することになります。


そして最後に残るのが「入国制限」です。現在中国では外国人に発行済みのビザや居留許可を全て一時的に無効にし、特定国に対するビザの免除措置も停止しています。ですから外国人は特例を除き原則的に入国できません。早い話、鎖国状態にあるのです。私は既に中に入ってしまっているから現在もいられるだけです。この厳格な入国制限がいつ解除されるのか私にはわかりませんが、6月に国内の状況が落ち着けば、その後順次緩和されることになるかと思います。中国で働いている外国人は非常に多いわけですが、科学技術やIT関係など、国益に直結する分野で雇用されている者が多いため、中国政府としてもそういった外国人たちが早めに戻れるよう体制を整える必要があるのです。


ただ、入国ができるようになっても、14日間の隔離やPCR検査、抗体検査等の様々な条件が付くことはほぼ間違いないかと思います。中国のコロナ対策は欧米諸国や日本のような「集団免疫獲得戦略」ではなく「封じ込め戦略」ですから、国民全体で見れば免疫力を持っている人の割合は現時点では非常に低く、国外からウイルスを持ち込まれては困るわけです。ですから、これはあくまで私の予想ですが、しばらくの間、今後中国で働く人たちは入国後に一時帰国がしづらくなるかもしれません。「抗体検査で陽性なら隔離不要」といったような条件が付く可能性も高いかと思われるので、そこまで悲観する必要はないかとは思いますが。来年にはワクチンも完成するでしょうし。


仕事や留学以外の目的、要はただの観光目的で中国に入国できるようになるのは当分先になるかもしれません。観光客に隔離を義務付けるわけにはいきませんし、入国時に抗体検査をして、陰性なら追い返すというわけにもいきませんしね。今後しばらくの間、中国は他国に比べてとりわけ入国しづらい国になる可能性が高いのではないかと私は予想しています。

 

北京の現状


それでは次に、現在北京にいる私の目に見えているリアルな状況に関してですが、皆マスクを着用している点を除けば、はっきり言っていつも通りの風景です。


先ほど家の近くにある大型スーパーに行ってきましたが、いつも通り大盛況でした。店内に入るための入り口にはタブレット型の体温計が設置されており、その前に立つと体温が表示され、正常値であればその旨電子音声でアナウンスがあり中に入ることができます。ということで検温に関してはまだ続いていますが、一旦中に入ってしまえば後は気楽にショッピングや食事を楽しむことができます。そこには飲食店もたくさん入っているのですが、どこも盛況でした。ただ、なんだかんだ言って皆まだまだ気をつけてはいます。飲食店で注文をしたら、料理が運ばれてくるまでは皆マスクをつけたままでいますし、食べ終わったら皆再度マスクを着用しています。その他だと、理髪店なんかもあるのですが、お客さんはマスクを着用したままカットしてもらっていました。日本の1,000円カットに相当するチェーン店なのですが、こちらでは10元(約150円)です。


「社区」と呼ばれる居住エリアや職場の敷地内に入る際にも相変わらず体温のチェックがあります。ただ、先月までは各種デリバリーサービスの配達員は中に入ることができなかったのですが、今月からは入れるようになりました。ただ、どうやらゲートのところで名前や電話番号をノートに記入する必要があるようです。配達員さんにとっては面倒でしょうが、利用者からすると、飲料等の重いものを注文した際にいちいちゲートまで取りに行く必要がなくなったのでだいぶ楽になりました。


とまあそんなわけで、私は現在いつもと変わらない生活を送っています。最近暑い日が増えてきたので、マスクをすると蒸れて不快に感じないわけではありませんが、数ヶ月間毎日着用していると、もはや下着のような着けていて当たり前のもののようにも思えてきます。ちなみに、その辺を散歩していると、高齢者の中にはマスクを外している人もちらほら見かけるようになりました。言うまでもなく、高齢者こそ着用すべきなんですけれどね。若者でマスクをしていないような人は今でも皆無です。

 

中国にはコロナはもういない?


多くの人が気になるのは、「中国にはもうコロナは存在しないのか?」、「完全な封じ込めなどそもそも可能なのか?」といったような疑問に対する答えかと思います。


言うまでもないとは思いますが、もちろん中国にまだ感染者はいます。


それなのにも関わらず、なぜ社会を正常化することができるのか?という問題になるわけですが、これは色んな要素が絡み合った結果なのです。


まずは、「そもそも正確な感染者数を誰も知らない」ということです。数週間前までは毎日感染者数や死者数の推移が報道されていましたし、例えば、残りのギガ数を知りたくて携帯の通信会社のアプリを立ち上げるとコロナ関係の統計がメイン画面に表示されていました。ただ、数週間前からそれらの統計が一切表示されなくなったのです。このことの背景には、延期されていた「全人代(全国人民代表大会)」が今月の下旬に開幕することが決まった点が大きく影響しています。これは要は日本で言うところの国会であり、中国における最も重要なイベントですから、コロナが蔓延しているような状態ではどうにもこうにも開催できないわけです。そしてやると決めたらもう是が非でも開催可能な「環境」を整えなければなりません。これ以上はあえて書きませんが、まあそういうことです。


ただ、そうは言っても、爆発的な感染拡大が起これば情報の制御も利かなくなりますから、個人的には、その程度には感染者数は少ないのだろうと想像しています。


中国では日本よりも2か月ほど早い段階で感染が拡大しましたから、コロナそのものに関する情報は非常に豊富に提供されています。人口が多いせいか関連分野の優秀な学者も多いわけで、実に様々な研究結果が既に公開されています。そこからわかることとして特筆すべきなのは、「コロナに感染してもほとんどの人は無症状もしくは軽症であり、実際の致死率は世間で言われているよりもはるかに低い」ということです。実際のところ、トップクラスの専門家が「まず大丈夫だから、それらしき症状が出たら家で療養するように」と発言していて、先日国内で拡散されたアドバイスにおいては、特に食事療法の重要性が強調されています。

 

blacknote.hatenablog.com


中国人というのは偉い人から言われたことをびっくりするくらい素直に聞きしっかり実行しますし、日本のような「ちょっと熱がある程度なら休まず仕事に行く」というような社会でもありませんから、案外そういったアドバイス程度で何とか収まっているのかなと私は考えています。


あとは、現時点ではまだわかりませんが、やはり日本同様、BCGワクチンを国民が皆接種しているからなのでしょうか。一時期大流行したとはいえ、人口でスケールすると中国におけるコロナの死者数は欧米諸国よりもはるかに少ないですしね。その辺に理由があるのだろうと考えない方が不自然なくらいです。

 

終わりに


ということで、中国では日常生活がほぼ戻りつつあるものの、コロナがいなくなったわけではありません。国土や人口のサイズを考えれば、実際の感染者数は現在でもある程度の数にはなるはずです。ただ、日本と決定的に違うのは、専門家が色々と具体的なアドバイスをした上で自宅療養を推奨しているという点だと思われます。あとは、国民がしっかりとそれに耳を傾けて実行に移しているという点なのではないでしょうか。大騒ぎをしたりパニックを起こしたりすることが一番危険なわけで、一先ず中国ではその程度の対策で何とかなっているということなのだと思います。


ですからまあ、これは非常に難しい話ではありますが、むやみやたらに毎日数字を公表して国民を動揺させるというのは案外危険なことなのかもしれないなと、正直私は最近思っています。日本では毎日5~35人程度がコロナで亡くなっていますが、肺炎による1日あたりの死者数は日本では例年250~320人くらいですから、少し冷静になれば、とんでもないことが起きている、というわけではないんですよね。


最後に、なぜわざわざ時間をかけて私が今回こんな記事を書いたのかという話なのですが、今回のコロナ禍において中国では日本に先行して大流行が起こりましたから、言葉は悪いですけれど、色んな面で実験台になってくれているわけです。ですから、そこから学べることをしっかり学んで、それこそ、良さそうな対策は積極的に真似をすることが重要なのではないかと思うからです。


中国の情報統制は倫理的に微妙だなとは思うのですが、SNS上で自粛徹底派と自粛不要派がボロクソに罵り合っている日本の様子なんかを見ていると、一般民衆をリードする上で真に正しい方法というのは一体何なのだろうかと、考えさせられたりもするわけです。


今後どう状況が進展していくのかはわかりませんが、私は民主主義と社会主義の間に立ったまま、今後も生温く見守りたいなと思っています。