元中国在住サラリーマンの徒然なる日々

かつて中国に数年間住んでいた日本人サラリーマンが綴る雑食系中国ブログ。ご連絡はTwitter(https://twitter.com/superflyer2015)経由でお願いします。

中国で稼いだお金を日本の銀行口座に送金する方法

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当記事では、中国の銀行口座から日本の銀行口座への国際送金の方法をご紹介したいと思います。

2020年6月時点での私の経験談です。

 

在中邦人の資金移動問題


中国で働いている日本人は多いわけですが、誰もが遭遇するのはやはり資金の移動問題だと思います。


中国で外国人が永住権を取得するのは極めて難しく、ビザ制度的にも60歳くらいで退職したらそれ以上の長居は難しいため、中国で働くということは現地採用であっても老後は日本で過ごすことが前提になります。ですから、一般的な労働者であれば、中国で稼いだお金の一部はどうしても日本に移動させる必要があるのです。


しかし中国政府は国内の富の国外流出を非常に嫌がっており、外国人に対しては厳しい制限が課されています。

 

chinalover.hatenablog.com


具体的には主に2つで、「人民元から外貨への両替は1日あたり500米ドル相当額まで(中国人なら1日あたり5,000米ドル相当額まで両替可能)」、「出国時に一度に国外に持ち出せる外貨は5,000米ドル相当額まで」という制限が課されているのです。


要は、一時帰国の際に日本に持って行けるのは50万円程度まで、さらにその50万円分の人民元を日本円に両替するのも大変ということです。


したがって、一度にもっと多くの金額を移動させようと思ったら銀行口座間の国際送金一択ということになります。

 

人民元の送金は不可能


それなら銀行に行って好きなだけ送金すればいいじゃないか、と思った方も多いかもしれませんが、ここでも中国ならではの問題があります。


まず、中国から人民元を日本の銀行口座に送金するというのは、私が調べた範囲内では不可能なようです。米ドルやユーロなら日本の銀行の外貨預金口座で受け取れますが、人民元はマイナー通貨なので人民元のまま受け取ることはできないのです。ですから、中国で稼いだ人民元を日本に送金するということの意味は、すなわち中国の銀行でまず日本円に両替し、その日本円を日本の銀行の円預金口座に送るということになるわけです。


したがって、国際送金をする際に課される制限というのも、結局のところ上述の両替制限なのです。ということで、在中邦人、というか在中外国人全般に言えることですが、母国への資金移動問題の正体は「外貨両替問題」に帰着します。

 

解決策


そんなわけで何とかして両替制限を回避する必要があるわけですが、実は決して難しくはありません。ほんのちょっと面倒なだけです。


結論を先に言うと、「雇用契約書」、「給与証明」、「納税証明」の3つの書類を銀行に提示することにより「1年間の手取りと同額」まで一度に両替が可能になります。こちらで暮らしていればある程度は稼いだお金を消費するわけで、要はこれらの書類を提示しさえすれば、実質無制限で好きなだけ両替や送金ができるようになるのです。


なお、これらの書類の入手方法ですが、「雇用契約書」は既に持っているはずなので問題ないとして、「給与証明」は職場で発行してもらえるはずです。私は職場の経理担当の方にお願いしたところ、パソコンで直近1年分の給与明細を印刷してくれ、それに職場の印を押したものを渡してくれました。かかった時間は10分程度です。「納税証明」の取得のためには税務署に足を運ぶ必要がありますが、これも拍子抜けするくらい簡単でした。パスポートを提示するだけで、前年の1月からの納税記録を印刷して渡してくれました。無料でしたし、たったの数分で済みました。整理券を取ってからの待ち時間の方が長かったくらいです。もっとも、それも15分程度でしたが。


今回私は2020年6月に、これらの書類を持って北京市内の銀行に足を運び実際に日本の口座に送金をしてみましたので、以下その手順を詳しくご紹介しようと思います。

 

送金の手順


今回私は、中国のメガバンクの一つである「中国工商銀行」の口座から、日本の「住信SBIネット銀行」の自分名義の口座に送金しました。


「ネット銀行に送金できるの?」なんて思われた方も多いかと思われますが、可能です。どうやら住信SBIネット銀行では、個人の場合、外貨送金はできないようですが、受け取りは可能です。ネット銀行ということでオンラインバンキングの機能が充実していますし、日本国内の他行宛の送金手数料も無料だったり格安だったりしますから、まずはそこに送金し、そこから適宜他の口座に振り分けるという使い方が便利です。


送金の手順ですが、まず一点注意すべきなのは、どこの支店でも国際送金を扱っているわけではないということです。国際送金が可能な支店に足を運ぶ必要があります。


銀行に着きスタッフの方に用件を伝えると、番号札を受け取った後でまず国際送金の申込書を渡されるので、そこに自分の名前とパスポート番号、その銀行で持っている口座番号、送金額を記入します。日本人の場合、名前はアルファベット表記になるはずですが、中国の銀行口座の名義は通常の英語表記とは異なり姓が先になっていたりする(必ずそうなのかはわかりませんが)ので注意が必要です。また、両替後、一時的に外貨(この場合は日本円)が自分の口座に入るため、外貨預金口座の番号も記入する必要があるのですが、人民元の預金口座と同じ番号で良いとのことでした。日本の銀行の場合、外貨預金口座は別途開設手続きが必要になることも多いわけですが、中国工商銀行では外貨預金口座はデフォルトで付いているようです。なお、その申込書には送金理由を記入する欄もありましたが、よくわからなかったので記入せずいたらそのまま処理してくれました。


次に、パスポートと持参した書類を提示し、それらのコピーをとってもらいます。


自分の番号札の番号が呼ばれたらそれらを持って窓口に行き、持参した書類の原本とパスポート、キャッシュカードと共に提出します。すると、給与受け取りの記録を取得するよう言われ(通帳がないタイプの口座だったからかも)、ATMが並んだエリアの置かれたマシンの場所に案内されました。キャッシュカードを挿入し、スタッフの方の指示通り項目を選んでいくと昨年1月以降の給与振込の記録(全項目を印刷すると大変な量になるので、「給与振込のみ」的なフィルタリングのためのボタンを押した方がいい)が印刷され、それを窓口に戻って提出しました。


あとは適宜窓口に設置されたテンキーで暗証番号を入力したりタブレットに署名をしたりするだけで、こちらはただ手続きが完了するのを待つだけでした。なお、この署名なのですが、アルファベットの大文字で姓名の順にするよう言われました。普通海外で「署名」といったらいわゆる「サイン」のような自分が最も書き慣れた崩した感じのものだったりするわけですが、中国では大体このパターンです。


全て行員の方がやってくれるのでこちらは待つだけなのですが、手順としては二段階になっていて、まずは人民元が口座から引き出されて日本円として外貨預金口座に入金され、それを日本の口座に送金することになります。両替が済むと送金のステップに進むわけですが、その段階で以下の情報を求められました。

 

  • 送金先銀行の名称、住所、SWIFTコード
  • 送金先口座の名義と口座番号と名義人の住所(日本の住所)
  • 送金者の現住所(中国での住所)


私はこれらの情報に関して事前にスマホのメモアプリに入力しておいたため、それを見せるだけで済みました。なお、行員さん曰く、コンピューターの画面上でSWIFTコードを入力したら銀行の住所は自動的に表示されたとのことでした。行員さんの入力作業が終わると、印字したものを見せられ内容を確認するよう言われたのですが、そこで一点気になることがありました。なぜか銀行の支店名や店番号を聞かれなかったのです。さすがにこれはまずいだろうと思ったのですが、支店名を記入する欄がそもそも存在しなかったため、一般的な方法に倣い、口座番号の前に店番号を加えてハイフンで繋いでもらうことにしました。「123-1234567」みたいな感じです。これで無事に日本の口座に着金しましたから、どうやらこれで問題ないようです。これをやらなかった場合にどうなっていたのかはわかりません。ちなみに、住信SBIネット銀行の公式サイトの関連ページには「Intermediary bank(中継銀行)」に関する情報も載っていますが、それに関しては今回は必要ありませんでした。


送金先口座の情報の確認が済み、少し待つと送金先の情報が印字された紙への署名を求められ、それにて全ての手続きが完了しました。最後に、提示した「給与証明」の原本に今回両替した額と日付を行員の方が書き込み、次回以降はそれを提示すれば短時間でスムーズに両替ができるとのことでした。ただ、それも有効期限は3か月程度だそうで、その後は再度規定の3種類の書類を提示する必要があるとのことでした。

 

所要時間と手数料


今回、銀行に入ってから出るまでに3時間ほどかかりました。ほとんどの時間は行員の方が手続きを進めるのを待っているだけですから、スマホをいじっていればあまり苦にはなりませんが、3時間はさすがにちょっと長いですね。


ただ、行員の方曰く、これはあくまで私にとって初めての両替だったからだそうで、2回目以降はもっとはるかに速く手続きができるとのことでした。なんでも、初回に関してはダブルチェック、トリプルチェックが必要で、何度も上司の承認を得る必要があるのだとか。要は、今回の手続きにより雇用契約書や給与関係の書類のコピーが全て銀行側に残ることになり、銀行側の信用を得ることができたということになるようです。


送金から受け取りまでにかかる時間に関しても書いておこうと思います。今回、土曜日に銀行で手続きをしたのですが、土曜日ということで実際の送金は月曜日になるとのことでした。火曜日には住信SBIネット銀行からメールが届き、着金があった旨の連絡と共に、送金理由をオンライン上で提供するよう案内がありました。専用サイト上で、そのお金の源や送金理由についての説明を入力し送信したところ、その翌日水曜日には無事口座に入金されました。なので、実際に送金がなされた2日後には受け取れたということになるかと思います。


手数料に関してまとめておきますが、以下の3種類が必要でした。

 

  1. 中国工商銀行への手数料:150元+送金額の0.1%
  2. 中継銀行(住信SBIネット銀行の場合はみずほ銀行)への手数料:1,500円
  3. 住信SBIネット銀行への手数料:2,500円


説明すると、まず中国工商銀行への手数料は送金時に別途口座の残高から引かれます。中継銀行への手数料に関しては、住信SBIネット銀行に着金した時点で既に送金額から引かれていました。住信SBIネット銀行から連絡があった際に金額が表示されていて、送金額と比べて目減りしていたので1,500円だったのだとわかったのです。そして住信SBI銀行の口座に入金される際に2,500円が引かれます。


今回私は8万元(約120万円)送金したので、規定に従えば手数料の合計は以下のようになります。
150元+80元+1,500円+2,500円=約7,450円


ただこれは一般的な場合でして、実は今回中国工商銀行に支払った手数料は約80元(約1,200円)だったため、実際に支払った手数料は以下の通りでした。
80元+1,500円+2,500円=約5,200円


なので、送金額の「約0.43%」ということになります。なんでも、中国工商銀行は住信SBIネット銀行と提携しているそうで、手数料の割引が受けられるのだとか。行員さんがコンピューターに住信SBIネット銀行のSWIFTコードを入力したところ、その旨が表示されたとのことでした。

 

まとめ


ということで以上、今回は中国の銀行から日本の銀行への送金方法のご紹介でした。特定の銀行に関しての経験談ではありますが、この手のルールは基本的に国が決めていますから、おそらくは他の銀行を利用する場合であっても、手続きの基本的な流ればほぼ同じだと思われます。


結論から言えば、納税証明の入手のために税務署を訪れる必要があるだけで、全体的には決して難しい手続きではありませんし、着金も早いので非常に便利な資金移動方法だなと感じました。


問題はやはり手数料の高さですね。ハンドキャリーであれば手数料などかからないわけですから、やはりハンドキャリーで一度に移動させられる額の上限である50万円を超えた額を移動させる場合に向いた方法と言えるかと思います。なお、50万円分の両替をするためにも結局のところ上述の書類を提示しての手続きが必要ですから、そもそも送金自体はオプションであり、メインはやはり「外貨両替」そのものであると言えるかと思います。


兎にも角にも、色々とルールが厳しい中国ではありますが、しっかりと納税している外国人であれば安心してこちらで稼いだお金を母国に移せるということが今回わかりました。当記事が他の在中邦人の方の参考に少しでもなれば嬉しいです。